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タナトスに似た欲動

またこういったことをせんとす

「世界平和度指数」から考える「戦争と平和」

戦争と平和」はよくセットになって議題に挙がるものであるが、実際にこのふたつを対比的に捉え、論じることは可能であろうか。私は初めに「平和」とはなんであろうかを考えてみた。国際関係の講義の最初にも問われた問題ではあるが、結局その答えを講義の中で見つけることはできなかった。元々答えなどないのかもしれない。しかし私は、この小論を通してある指標を基に、「平和」を仮説的に設定し「戦争と平和」について論じてみたいと思う。

今回、私が参考にした指標は「世界平和度指数(GPI)」と呼ばれる英国経済誌『エコノミスト』の調査研究機関「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が2007年から毎年発表している「内戦の程度」「軍人の数」「暴動の可能性」など、23項目を評価し、世界158カ国(2012年版)をランク付けしたものである。もちろん、この調査による数値がその国の治安や国民の幸福度、平和状態の実情を表しているとは思わない。実際にEIUは、各方面から項目に対しての批判を認めている。しかし、私はこの指標が一定の「平和」示しているとも考え、仮にこの指数が高い状態が「平和」であると定義し、「戦争と平和」について論じるための出発点として考えてみたいと思う。

私が注目したのは、近年の「戦争」を語るうえでシンボリックな存在になってしまったイラクのランク付けだ。EIUが調査、発表を始めた2007年から2010年まで、イラクは常に最下位にランク付けされている。世界「平和度」指数と銘打った調査の最下位が、現代の「戦争」状態を代表するイラクであるという事実は、「戦争と平和」というテーマを語るうえでとても興味深い。しかし、注目すべき点は、この指標が戦争状態を定義し、それに基づくランク付けをしているわけではないという点である。

実際にイラクが減点されている項目を見てみると、「他の市民に対する不信感の程度」「殺人事件の発生数」「内戦の程度」「近隣諸国との関係」「難民数」など、最低ランクである5点をつけた項目は多岐にわたるが、そのすべてがいわゆる「戦争状態」を表すものとは言えないのではないだろうか。また2011年末のオバマ大統領による戦争終結宣言を受け、2012年版のイラクのランク付けが上がっているのだが、それでも158カ国中155位と世界でも最低ランクであることは確かであり、戦争の終結が平和をもたらしたとは言いがたい状況である。


確かにイラクの現状は長期化した戦争がもたらしたものを多分に含んでおり、最下位にランク付けされた事由も戦争を起因とするものであることは確かである。しかし、戦争が平和を遠ざけることはあっても、戦争の終結がすなわち平和でもないことも、これらのデータから確かなようである。戦争は平和をその国から奪った。そしてその平和を取り戻すには戦争を終結させるだけでなく、戦争がもたらした数多くの困難を解決しなければならない。つまり「戦争と平和」を対比的に語ることはできず、一度戦争状態が起きてしまえば、平和を取り戻すにはその何倍もの苦労と努力を必要とするのである。平和を「戦争状態にないこと」とこのように一義的に捉えることはできず、戦争前の平和と戦争後の平和を区別して考える必要があるのである。、維持していく「平和」と回復させ再び手に入れる「平和」を分けて考え、それぞれの平和のために私たちがなにをすべきなのかを考えることが「戦争と平和」を論じる第一歩になるのではと、私は考える。


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