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タナトスに似た欲動

またこういったことをせんとす

Soul of どんと 2010

ブログ

「胸が詰まる」という言葉を、身をもって体験した。

普通、人はどんな時に「胸が詰まる」のだろうか。

一般的な定義としては、

(1)食べた物が胸につかえる。
(2)感情が高ぶって胸が一杯になる。胸が塞(ふさ)がる。
三省堂提供「大辞林 第二版」より

となっている。

しかし、この言葉にあるような、胸が「詰まる」感じをうまく説明することができる人は少ないように思う。

僕だって『感情が高ぶって胸がいっぱいになる』なんていう経験は、今までに無かったと言えるほど少ない。



では、僕が経験した「胸が詰まる」はどうであったか。

場所は、日比谷公園大音楽堂(通称野音

8月15日、僕はSoul of どんと というイベントを見に行った。

ローザ・ルクセンブルグBO GUMBOSというバンドに在籍していた、どんとこと久富隆司氏の追悼イベントである。

と言っても、イベント10周年を記念した今回のSoul of どんとは、「追悼」というような悲観的な雰囲気はまったくなく、どんとを慕う様々なアーティストによる、とてもピースフルなイベントだった。



どんとのことを知らない人に為に、その出演者の一部を関連サイトから引用したいと思う。

泉谷しげる / 奥田民生 / 岸田繁くるり) / <NARGO(Tr)/ 北原雅彦(Tb)/ GAMO(T.Sax)/ 谷中敦(B.Sax)>(東京スカパラダイスオーケストラ) / 曽我部恵一 / 中納良恵(EGO-WRAPPIN') / ハナレグミ / 浜崎貴司 / 原田郁子クラムボン)/ 松たか子 / 宮沢和史 /ユースケ・サンタマリア / YO-KING /

一般的に有名である人ばかりを抜粋させてもらったが、これだけの豪華なメンバーがまさに「一堂に会する」というだけでも、どんとがいかに愛されているかわかってもらえるのではないだろうか。



なぜ僕がどんとという人を知ったかと言えば、忌野清志郎が出演したSoul of どんと 2006の映像を見たのがきっかけだったように思う。

恥ずかしながら、僕は日本語ロックが好きだといいながら、それまでBO GUMBOSというバンドがいたことすら知らなかった。

清志郎が死んでからは、そのどうしようもない悲しみを紛らわすために、YouTubeでいろいろな関連動画を毎日のように見ていた。

その中で見つけたのが、Soul of どんと 2006で『孤独な詩人』を歌う清志郎の映像だった。



誰も聴いては くれないでしょう

聴いておくれよ 悲しい歌を

遠い異国の 旅の歌を

空を舞い散る 夢の歌を

いつかは誰か 足を止めるさ

そして 目を開けたら 人の群れ

歌を聴こうと 待っていました


どこへ歩いて 行くのでしょう

ひとりぼっちで ギターを弾くよ

雨に打たれて 花の歌を

声にならない 虫の歌を

明日は空も 晴れてくれるさ

そして 目を開けたら 舞台の上

ふらり倒れて 友達や仲間たちが

ぼんやり浮かんで 消えた

星になったのさ 星になったのさ



そのイベントが追悼イベントであることや、「どんと」が何なのかすらわからなかったけれど、既に故人となってしまった清志郎が一生懸命に、ソウルフルに『星になったのさ』と歌うその映像に、僕は圧倒された。

そして、涙が出た。



清志郎が死んでからずっと僕は、人が死ぬ悲しみから抜け出すことができなかった。

自分が死ぬことを受け入れることもできなかったし、愛する人が死んでしまうことも受け入れることができなかった。



どんとのこと知ってからは、どんとの映像もいろいろと見た。

どんとの曲のすばらしさや、BO GUMBOSというバンドのすごさも知った。

そんな中、Soul of どんとが復活することを知り、僕は参加を決意したのだ。



そして当日、初めての野音は噂どおりの素晴らしい場所だった。

ハナレグミも言っていたけど、こんなところでいつかライブができたらどんなに素敵だろうと思った。



イベントは、始めからほんとに感動的で、ライブイベントとしても申し分無いものだった。

なんといってもバンド演奏の技術が高くて、曲の良さを最大に引き出してくれていた。



息子のラキタが歌う「橋の下」もよかったし、松たか子が普通に「魚ごっこ」を歌って普通に帰っていったのもよかった。

ユースケサンタマリアはまさに全力で「さいあいあい」を歌ってくれた。本当にどんとが好きなんだとわかった。ユースケのことが今までよりもっと好きになった。

EGO-WRAPPIN'の中納良恵が歌った「ゆーらゆら祭りの国へ」は、知らない曲だったけれどなぜだか泣きそうになった。それくらい歌に魂がこもってた。EGO-WRAPPIN'をちゃんと聴いたことなんてないけれど、この人の歌声すごくよかった。

くるりの岸田が歌う「トンネル抜けて」も好き。だけど、この曲はハナレグミが歌うもんだと思ってた。

逆にハナレグミは「夢の中」を歌った。くるりでカバーしてたけど、これはあえて外してきたのかな。ハナレグミは最近聴くようになったけど、やっぱり生歌の力強さは半端ない。

僕にハナレグミを勧めてくれた女の子がクラムボンもいいよって言ってたけど、この日のライブではクラムボン原田郁子も出た。「昔むかし」という曲は聴いたことなかったけど、これもすごくよかった。とにかくアレンジがすごくよくて、どんとの曲ではあるけど、自分の曲のように歌っていた。クラムボンも聴いてみようかな。

「あこがれの地へ」で泉谷しげるが出てきて、奥田民生が「もしもし、OK!」を歌う。そして、YO-KINGが「ダイナマイトに火をつけろ」を歌ったところで会場の熱はかなり高まっていた。

しかし、そのメンバーの豪華さからそろそろ終わりなのかな・・・というような不安感も漂っていたように思う。

その時、BO GUMBOSのメンバーで、キーボードを担当していたDr. Kyonが信じられないことを言ったのだ。



「次はこの方に来ていただきました!……忌野清志郎ー!!」



この言葉を聞いたときの衝撃は、たぶん一生忘れないと思う。

僕は、このイベントの間ずっと考えていたことがあった。

このイベントで、どんとのこともいろいろわかったような気がする。そして、なによりもどんとが知った時には既に故人であったという悲しみを克服できた気がしていた。

しかし、その一方で清志郎のことが頭から離れず、清志郎を失った悲しみはどうしたら克服できるのだろうかと考えてしまっていた。

せめてすこしでも清志郎のことに触れてくれないだろうか・・・・・・。

このような素晴らしいイベントが、また開催されるのを、待つしかないのだろうか・・・・・・。

清志郎が生きていて、このイベントに参加してくれたらどんなに素敵だろう・・・・・・と。



そんなことばかり考えていた僕にとって、本当に衝撃的な言葉だったのだ。

日比谷野外音楽堂に映し出される忌野清志郎

そう、それは『孤独な詩人』を歌うあの清志郎だったのだ。

僕は本当に、本当にうれしかった。

どうしたらいいかわからないくらいうれしかった。

そして僕は「胸が詰まる」というのをこういうことなんだと実感した。

涙が止まらないだけじゃなくて、息ができないのだ。

少しでも息をしようと口を開けば、言葉にならない声が漏れてしまいそうになる。

そのために僕は息を吸うことしかできず、ただじっとしていることしかできなかった。

汗と混じった涙が口に入ってくることを止めることもできずに。



本当に、本当にうれしかったんだ。



その後の、ハナレグミ中納良恵YO-KINGによる「カーニバル」はもう何も言えなかった。

ほんとに愛にあふれていて、感動的だった。

とにかく、すべてのもの、まわりを囲む緑や、涙越しに光る照明の光までが、キラキラと輝いていて、間違いなく、その瞬間世界で一番輝いていたと思う。

そして、僕は清志郎が死んでしまったことを受け入れることができたような気がする。

人はいつか死んでしまうけれど、それはあまり悲しいことじゃない、と思えるような気がしてきた。(まだまだ自分をごまかす程度だけれど)

とにかくそういう意味でもいいイベントでした。愛知から駆けつけてよかった。

僕の今まで見たライブの中でも、一番と言っていいと思う。 (※その他の一番(笑)……群馬の野外フェスでみたゆらゆら帝国フジロックフェスティバルThe White Stripes



ずいぶん長くなってしまったけど、感動が思い出になる前に書いておきたかったのでとりあえず!

twitterからこられた方は、僕がラキタ君と現在同い年(学年的には一個上ですが)の二十歳であり、リアルタイムでどんとを知らない世代の書いた記事であるということをふまえて読んでいただけるとうれしいです。

それでは、乱文失礼しました!



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