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タナトスに似た欲動

またこういったことをせんとす

無題

ブログ

雨が降りだしたのと同時に、女は僕の部屋に侵入してきた。

湿気を帯びた空気に女の髪の匂いが混じる。
シャンプーの匂いだけでは隠しきれない、女の生活が染み込んだ匂い。

……この匂いに騙される男が多いんだ。ずっと嗅いでいたいようなこの匂い。不思議と安心する。僕の友人で、妻の頭皮の匂いばかり嗅いでいた為に離婚寸前までいったやつがいたな。

そんなことを考えながら女に挙動に意識を戻す。

いつのまにか女は下着姿になっていた。

『回転する駒が倒れる危うさは、射精する疚しさに似ていると本で読んだの』

そういって女は笑った。

……笑った?確かに笑ったはずだが、次の瞬間にはその名残も残さずに女の顔は無表情に変わった。

『わたしが次にどうするか、あなたにはわかっているはずよ。だってわたしは、現在進行形のあなたの物語の作中人物なのだから。』

……僕には女の言うことがわからなかった。

僕はふと窓の外に目をやった。

――雨は激しさを増したようだ。

『あなたが望んだように、しようかしら?』

そういって女はブラジャーを外した。

つんと上を向いた乳房の先にははっきりと形を現した黒い乳首。

『こんなことだってできるのよ。』

女は裸になり、踵を軸にして振り返った。かくんと腰を落とし、膝をついて四つん這いになり、腰を高く上げた。

『こんなことをしなくちゃいけないなんて、ずいぶん惨めなヒロインだわ。』

身体中の血液が指先に集まり、勃起した指が女に触れようとした。

『触らないって約束でしょ。作者が簡単にルールを変えてしまってはおもしろくないわ。』

僕は酷く侮辱されたような気がした。僕の物語の作中人物が作者に意見するなんて馬鹿げている。